もうすぐゆきのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション
クリスマスの前には、楽しいことがたくさんある。暖炉でリンゴを焼きながら、おばあさんの話を聞いたり、氷のそりで雪の丘をすべったり。でも一番楽しみなのは、やっぱりクリスマス。いとこたちが全員集まり、皆でモミの木を切るために森に行く。ろうそくや、光るボールできれいに飾りつけをすると、魔法の木は、まばゆい光で皆の1年を照らし出す。 繊細に描かれた、枯れた冬の木々。暗めの寒色を使った、雪に包まれる農村の風景。子どもたちは、伸びやかに冬を楽しみ、家の中では暖炉が燃えている。農村の素朴だが、精神的に豊かな日常生活が描かれる。厳しい冬の風景であるのに、読後感はあたたかさであふれるような絵本である。 子どものころに感じたような、クリスマスを待ち望む気持ちでいっぱいの本だ。この本を読みながら、いつもとは少し違ったクリスマスのプランを立てるのも、楽しいかもしれない。プレゼントにもいいだろう。(田村恵美)
雪の降らない地方の子供には酷な本だったかもしれません。 |
我家のある地方は、風花が待っただけでニュースになります。ましてや雪でも降ろうものなら、トップニュースです。我家の冷凍庫には、約15cmくらいの15年位前の雪だるまが冷凍保存されています。雪が積もったのです。
今や大学4年、来春には社会人になる長女と、今年大学に入った長男とが庭で作った1mくらいの雪だるまが、だんだん解けていくのを見て、この二人が「南都や雪だるまさんを助けてあげて」といったのでサランラップに来るんで消滅直前に、保存したのです。
この頃、我家に英語版のこの作品がありました。「カナリアシスリーB」などと違って、雪自体が分からないためか、子供たちは、この作品には、興味を示しませんでしたが、今、この復刻された日本語版を読んで、「雪だるまはまだ生きてるよね」・・・・
何か通じるものがあったのではないでしょうか?
そうであったとすれば、この15年間冷凍庫の邪魔者であった水の変形物も意味があったのでしょう。
ターシャの作品と関係ないようでいて、実は結構関係しそうな気がしております。
輝く雪景色の中から妖精が飛び出しそうな美しい絵本 |
丘をたくさんこえた、そのまた向こうにねずみたちが走り回り、壁にきつつきがたくさん穴を開けている古い古い家がありました。
古い家に住む子どもたちセスとべサニーとマフィンは、クリスマスが近づいている静かな冬の夜、暖炉の火でリンゴを焼き、おばあさんの昔ばなしに耳を傾けています。おばあさんの声とともに聞こえてくるのはねずみの足音。
クリスマスがくるまで、子どもたちは学校や家や自然の中でどのように過ごすのでしょう。森の小みちやウィンスロップの丘や小川でにぎやかに遊んでいるうちに季節は少しずつ移ろってゆきます。
針葉樹林から切り出される樅ノ木、子ども達にとって夢のようなクリスマスが訪れます。ねずみたちもクリスマスプディングのおこぼれにありつくのでしょうか。
子どもたちだけでなく、小さな小鳥やねずみたちをも明るく照らし出すクリスマス絵本。ターシャの初期傑作絵本、ターシャ・テューダークラッシックコレクションの一冊。輝く雪景色の中から妖精が飛び出しそうな美しい絵本です。
なつかしい静かな夢見るクリスマス、ターシャ・テューダーの世界です。 |
ターシャ・テューダーの大好きな私の評です。
でも、キラキラと大騒ぎして、大きなプレゼントが飛び交うのがクリスマスの昨今の風潮・・・・それはそれで、ひとつの形ですが、ターシャのクリスマスはオールド・アメリカン、昔ながらの静かなクリスマス。(子供たちが幼稚園のときに「しずかなクリスマス」という歌を歌ったのをおもいだします。息子はジングルベルよりも好きでした・・・・)
古いスタイルのままに、質素に優雅に暮らしている、彼女の生活と重なってきます。静かに開いていると、しみじみ暖かくなる小さな絵本です。ターシャの優しい絵本です。