オムニバス(クラシック)
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
ドラマのBGMを越えて・・・ |
現在(06年9月)放送されているドラマ『結婚できない男』で、このCDの最終曲(ショスタコーヴィチの交響曲第5番ニ短調作品47第4楽章)が、隣人へのあてつけに主人公がかける大音量の音楽として使われていることから、このCD、あるいはこの曲の存在を知った人も少なくないだろう。加えて、このCDは1曲目の『剣の舞』で有名なハチャトゥリアンの『ガイーヌ』とのカップリングなので、その大半が民族色が濃厚でヘビーなサウンドな曲で占められている。そのため、ドラマのスタッフが上述の用途でこのCDを使用したのもうなずける話である。
とはいえ、このCDを単なるドラマの(しかも騒音用の)サントラのようにみなしてはあまりにももったいない。このCDに収録された曲はいずれも個性が強烈なため、一歩間違えば情感過剰で甘ったるい演奏になりかねない。しかし、スクロヴァチェフスキ、ドラティのいずれも曲自体が持つ躍動感を存分に生かす一方で、不必要な情感を排し非常に端正な演奏をしている。それゆえに、ドラマの主人公ならずとも、これらの曲の魅力を存分に堪能し、さらには作曲者がこれらの曲にこめた思いにまで思いをはせることもまた可能である。
ドラマが好きでこのCDをなんとなく面白半分で購入する人もいるかもしれない。しかし、それゆえに最良のハチャトゥリアンとショスタコーヴィチを味わえるのだから、これを買った人はとても幸運な人であるとわたしは断言したい。