アンセルメ(エルネスト)
ラヴェル:ダフニスとクロエ
超名盤、アンセルメのダフニスとクロエは同曲の水戸黄門的存在である。 |
晩年のアンセルメが全盛期のスイスロマンドを楽器に格調高く、威風堂々と演奏しきったダフニスとクロエは全ての点で同曲の規範、標準原器だ。1965年5月の録音だが、新進気鋭の録音技術者James Lockはこの名演奏を超絶した感性とテクニックによって、現代の最優秀録音に匹敵するクォリティで記録する事に成功している。アンセルメ/スイスロマンドの醸し出す独特の透明感と色彩感を、圧倒的なダイナミックレンジで余す所なく再現。マルチマイク録音とは思えぬ正確な音像定位で聴くものをステージ直下のかぶりつき席に招待し、すさまじく分離の良い音の洪水を容赦なく浴びせかける。アンセルメ/スイスロマンドが現在もなお存在し、いまその演奏会に行って居るかの仮想体験。現代の指揮者、録音プロデューサー、技術者はこのアナログ録音の金字塔をもう少し見習うべきだろう。『眼を覚ませ。控え居ろう!』なのである。