プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」
マゼルも若かった |
1973年6月の録音。マゼルならではの、角が立った、輪郭がはっきりした演奏に、ズバリ「若さ」が加わって、長丁場を音だけ(バレエの舞台ナシで)聞いていてもグイグイと「聞かされて」しまいました。
ところで、Dance of the five couples(「5組の踊り」)中間部の録音が左→右と移動するような効果がかかっているのってなんででしょうか? 昔人から借りて聞いたのもこうなってたから、私のだけおかしいわけではない様子ですが。四半世紀前からの疑問。
疑問といえばもう一つ、MAAZELはなんで「マゼール」と表示されるんでしょうねえ?あちらの方々の発音をカタカナにすると「マゼル」の方が近そうなんですが……???
管弦楽曲としての魅力全開 |
このプロコフィエフの代表作には様々な楽しみ方があると思いますが、その内のひとつにオーケストラの魅力を満載した巨大な管弦楽曲としての側面があります。愛の主題、ジュリエットの主題などの美しいメロディ、決闘シーンに代表されるオケの名技を堪能できる激しい曲、2時間をこえる大曲でありながら長さを全く感じさせないほどの個性的ながらも親しみやすい旋律と生彩にとんだシャープなオーケストレイション。まさにオーケストラの魅力が心ゆくまで堪能できます。
マゼール盤はこのような魅力をフルに活かしきった名演と言えるでしょう。細部まで緻密に彫琢しつくすマゼールの表現とそれに応えるクリーブランド管の素晴らしい演奏技術が相俟って、前述の管弦楽曲としての魅力が全開になってます。特に様々なニュアンスが交錯する場面での立体的な響きは実に見事です。
ストーリーに沿った劇的な解釈や濃厚なロマンティシズムとは無縁な演奏なのでそういったものを期待する方には物足りないかもしれませんが(ただし現代的なリリシズムは感じます)、音楽的で分かりやすい演奏は、初めてこの曲に触れる人も充分楽しめると思います。