サロネン(エサ=ペッカ)
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」「オルフェウス」
人気ランキング : 16182位 定価 : ¥ 2,100 販売元 : ソニーミュージックエンタテインメント 発売日 : 2001-06-20 発送可能時期 : 通常3〜4日以内に発送 価格 : ¥ 1,995
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すばらしく見通しのよい統計の時代の英雄交響曲 |
「ちびのピョートル」は、確かにかの大帝と同じ名前を持つが、統計学(人を頭数で表す)時代の現代的な、つまり小さくて偉大な英雄である。彼は自分の恋のためにこの世界に正面からぶつかり、そして名もなく敗れていく。ストラビンスキーは例の有名なペトルーシュカ・コードをはじめ、原始的、根元的な和音でこの英雄を支え、そしてたゆたうようなフルートと弦楽の喧噪のなかにこの英雄を静かに寝かせる。
サロネンほどこの音楽をよく理解し、現代におけるその意味を明らかにし、透徹した表現で描ききった指揮者はいないだろう。ルネサンス時代にはドン・キホーテが風車と戦うシーンでアンチ・ヒーローは見事に真のヒーローとなった。19世紀ならばベートーヴェンがボナパルトをモデルに英雄を描いた。?!??れまでは大きな人物の大きな魂を描くことがヒーローを描くことと同義であった。しかし、この現代、ヴァレリーのファウストが現代のメフィストフェレースに向かって「君はずいぶん古典的な存在だね。まだ魂を一つ一つの重さで量るのかね?今は統計の時代だ、悪魔の価値はいくつの魂を地獄に落としたかで決定されるのだ」と言い放つ時代、この小さなピーター、存在のあまりの軽さに打ちのめされるピーター、それでも抵抗を止めないピーターを描くことは、それもわかりやすく描くことは一つの意味のある仕事である。エサ=ペッカとフィラーモニア管はその仕事を見事にやりおおせた。細部の鋭さではブーレーズとクリーブランド管の古い録音に譲る。しかし、全体としては圧倒的なメッセージの力がある。