バレエ教室（子供のおけいこ）

???オオカミとブタは、子どもをハラハラさせるストーリーが不可欠な児童書の世界に、実にうってつけの素材だ。この『Swine Lake』がそれを証明してくれる。本書は、故ジェイムズ・マーシャルとモーリス・センダックが、見事な才能を出し合ってできた傑作だ。イラストも自分で描くつもりでいた作者マーシャルは、1992年に急死した。そのあとを引き継いだ親友センダックが本書に挑戦、そしてついに、こんなに楽しい作品を完成させたのである。この作品には正真正銘、命が吹き込まれている。 ???陽気なこの物語は、おなかをすかせたみすぼらしいオオカミが、初めてやってきた町でうろついている場面から始まる。
???オオカミの鼻は突然、ぴくぴく動いて止まらなくなる。ブタのにおいだ！通りの向こう側の劇場にはまさに「白ブタの湖、ボリショイ・バレエ団」と大きく書いてある。オオカミはうれしくてたまらず、「フランスの香水でちょっぴりうすまってはいるが、本物のブタのにおいに、たまらない気持ちになった」 ???高級車を劇場に乗りつけた、着飾った雌ブタからお昼の部のチケットをひったくったオオカミは、何食わぬ顔で劇場に入る。「もしも、チケット係がもっと気をつけていれば、オオカミの長い爪に気づいたことでしょう。そうすればこれから起こることも防げたかもしれなかったのに」と、マーシャルはていねいに説明を加えている。オオカミは、上の空の案内係に連れられて、舞台の真ん前の特等席へ座る。ブタを襲うのにはもってこいの席だ。ショーが始まるとオオカミは、どのブタが一番おいしそうか、品定めする。しかし、そうこうするうちに、不思議な物語にどんどん引き込まれていき、けっきょく、第2幕まで待つことに。第2幕も進み、やがてブタを食べることなどすっかり忘れて、オオカミはとうとう舞台を最後まで見てしまう。その日の夜、オオカミは自分のブタの貯金箱を割り、なけなしのお金で「白ブタの湖」の夜の部のチケットを買うのだった。 ?「白鳥の湖」をよく知っている読者は、マーシャルとセンダックが描く、ブタ演じる有名バレエシーンに笑いをこらえるのに苦労するはずだ。「白鳥の湖」をまったく知らなくても、単純な筋のおはなしなので十分楽しめる。けものの中で一番鋭い牙を持つはらぺこオオカミの心を、ブタのバレエが和らげた、という魅力的な物語を作り上げた2人の素晴らしい作者は、児童文学に歴史的貢献をした。ファンは、以前よりも軽さがあり、笑いを誘う、センダックのイラストを見ることになる。きっと笑いを愛するマーシャルの魂が、センダックの絵筆を新境地へといざなったのだろう。

ブタさんも、はらぺこオオカミもほんとうに魅力的で、さすがはセンダック。
親友マーシャルへの想いが込められているのですね. . . 。
さくまゆみこさんの、繊細で美しい日本語訳にもうっとり。
姪へのクリスマスプレゼント、今年はこの本に決めました♪

センダックの新作がやっと出ましたね。洋書でも持ってますけど、日本語版のクオリティも高くて、とても気に入りました。細かいところまでこだわりが感じられて嬉しいです。おススメですよ。

　　きっとブタの観客たちは私と同じ気持ちでしょう。何せ腹ぺこオオカミがなけなしのお金でボックス席を買い、そこからステージに飛び降りてジューシーなプリマをさらう役を演じるのですから。翌日の新聞に載った批評は？ 　　筋書きは“白鳥の湖”とはまるで違いますが、ひょっとしてもっと面白い？　だって宿命のオオカミとブタが主人公ですもの。
　　センダックは、さぞかしこれを書いている間楽しかったことでしょう。細部にこだわりにこわだっています。その後をなぞる楽しさは読者のもの。黒沢明のお葬式のニュースやニジンスキーの名前、その他見つけてうれしくなる宝捜しの楽しみも。でも、腹ぺこのままオオカミさん（思わず“さん”付けに…）はどうするのでしょう？
　　お子様に独占させるのは大いなる損失です。