Steven G. Marks
How Russia Shaped the Modern World: From Art to Anti-Semitism, Ballet to Bolshevism
人気ランキング : 247809位 定価 : ¥ 6,426 販売元 : Princeton Univ Pr 発売日 : 2002-11 発送可能時期 : 通常1〜2週間以内に発送 価格 : ¥ 7,069
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面白い本です |
わずか300ページの本ですけど、1958年生まれの著者は、非常に多岐にわたる話題を扱っています。強いてあげれば、ロシア音楽が抜けていますが。視点はロシアという非西欧(東方)が世界に与えた影響です。ここでいう世界も、西欧だけに限定することなく、アメリカ、欧州、中東や南米も射程に入れられています。日本への影響もかなりのスペースを割かれており、文学や反政府運動だけでなく、クロサワの映画についてまでの言及もあります。扱われた話題のなかでは、新鮮な視点を提示するものもあれば、日本人にとっては、もはや常識となっている部分もあります。特にクロポトキンやトルストイの影響の部分は、もはや日本的な導入の文脈の中で、その特徴は語り尽くされていると思われるところもあります。私に参!考になったのは、やはりドストエフスキーの提示した問題の多様性、普遍性と先駆性の部分です。フランス文学だけではなく、20世紀アメリカ文学をドストエフスキーとの関連から論じた部分は、参考になりました。またロシアの反ユダヤ主義が、バルト出身のドイツ人の帰郷を通じて、第一次大戦後のドイツの特殊な文脈の中で、グロテスクに肥大化していく現象についての言及も、これまではあまり取り上げられていなかった部分です。最後はやはりなんと言っても、20世紀の世紀病としての共産主義が東方の光というオーラを放って、もう一度、その誕生の地、欧州に、舞い戻ってくる部分です。いつも文化伝播はオリジナルな文脈を離れて、当初は、意図していなかった結果を生み出す。そのポジ・ネガ両面を含めて。