マイヤリング*バレエ音楽
未だに謎のマイヤーリンク事件 |
このマイヤリングで『新しい自分を発見した』らしいイレク・ムハメドフが、有名な「うたかたの恋」で難役のルドルフ皇太子を演じています。
全幕通してルドルフを演じ分けるムハメドフとレスリー・コリアはさすがに秀逸。
ハプスブルグ家の重圧を背負う登場人物の複雑な心理描写が見事に表現されたマクミランの振付と多彩なリフト。
時代を象徴するリストの音楽。
幕間の多さはDVDとしては多少辛いが、どの場面も実によく構成されていて見応えがある。
特にルドルフ皇太子を中心に展開される女性関係を非常に巧くパドドゥで表現しています。
元愛人のラリシュ伯爵夫人(レスリー・コリア)、ルドルフの母エリザベート皇后に新妻の王女ステファニー。それぞれの想いが踊りに生かされています。
2幕の居酒屋では、ミッツィ・カスパーのダーシー・バッセルとブラトフィシュが魅力的で、ムハメドフらと共に卓越した踊りで盛り上げてくれます。
随所に登場する4人のハンガリー高官との踊りもお互いの関係が絶妙に表現された振付です。
そして、最後の愛人マリー・ヴェツェラのヴィヴィアナ・デュランテとの一体化したリフトは圧巻!!
ムハメドフの強靱さとデュランテの華奢でしなやかな肢体が絡みあったパドドゥです。
段々と病んでいくルドルフと恐怖感よりも死に憧れすら漂う対照的なマリーの姿…。
エピローグの前に、実際の登場人物の映像があり、感慨深いです。
何度も繰り替えし観るべき |
それぞれ複雑な気持ちを抱えているたくさんの登場人物がいて、歴史的背景も絡まってくるストーリーなので、解説も何もなしにただ一度観ただけではよく分からないかもしれません。でも、何度も見返すたびに、どんどん感動が深まってくる作品です。イレク・ムハメドフがとにかく最初から最後まで出ずっぱりで、苦悩に満ちたルドルフを熱演しています。自分の結婚式で、新妻の妹である王女ルイーズを踊りに誘い、その後の母エリザベートとのシーン、新妻ステファニーとの寝室での激しいパ・ド・ドゥ(眼を奪われます!)、マリーとの初めての密会、そしてマイヤリングでの最期のパ・ド・ドゥ。人間技と思えない複雑なリフト、ほとばしる感情が音楽と合わさって、観ていて圧倒されます。マリーを演じるヴィヴィアナ・デュランテ、最初の登場シーンはあまり印象に残らないのに、どんどん悲劇へと向かっていくにつれて怪しい美しさを放っています。高級娼婦ミッツィのダーシー・バッセルはとにかく端正な美しい踊りでマノンと黒鳥オディールを連想しました。ルドルフの従者ブラトフィッシュ(マシュー・ハート)の踊りと、墓場で佇む悲しみの表情もすごく良かったです。不満なのは、場面の切り替えの時にはずっと、画面に王冠の絵が映し出されてるだけの静止画像なこと。どうせなら指揮者やオケを映してくれてたらいいのに、間奏の間はずっとその静止画像で、いきなり幕があがった舞台が映し出されます。それと、せっかくDVDなのにチャプターの数が少ない。全3幕13場でチャプターも13。もっと細かく踊りごとにチャプターがあればいいのにと思いました。
物語に引き込まれる『うたかたの恋』 |
すばらしくドラマティックな作品です。ダンサーの細やかで巧みな演技は、まるで映画を観ているようです。美しいコールド・バレエはありませんが、最高に贅沢なキャストでマクミラン特有のあの美しいリフトをふんだんに魅せてくれます。ムハメドフ・デュランテ・コリア・バッセルとダンサーの完璧な美しさもさる事ながら、どんどん物語に引き込まれ大変感動しました。