鈴木 晶
バレエの魔力
ガイドブックなのに親しみやすい文章で |
バレエの基本的な情報、つまり必要最低限の歴史や名作の解説が中心のガイドブック、となれば固有名詞が淡々と続く記述に飽き飽きさせられる本が多いのも事実。
なのにまるでガイドブックとは思わせられないような、鑑賞者のための取捨選択(ここのシーンはつまらないから別にいい、とか)と親しみやすい文章でキレイに読ませられます。冒頭にある、一応おじさん向けに書いた云々の通り、途中途中で「おじさんとしては…だろう」というフレーズがはさみこまれてて鼻につくかも知れませんが、それはそれでともすれば退屈になりがちな歴史の記述の良いアクセントとして効果をあげているよう感じられます。
題名の「バレエの魔力」はバレエに魅了される事を指し示していますが、読者おいてきぼりの溺愛を書き!連ねることなく、バレエ鑑賞へといざなう事で自身で魔力に溺れて欲しいという著者の姿勢が見受けられる気がします。ただ、あとは作品紹介や歴史と同じくらいの分量を、鑑賞者としては知っておきたいバレエの「技術」にも個別で1章分くらい割いて欲しかったです。むろん随所できちんと扱われてはいますが、バレエの楽しみ方を知る上では一貫した解説も読みたいところでした。